15歳以下の野球アジアナンバーワンを決める第10回 BFA U15アジア選手権は8月19日から始まった。充実の合宿を終え、選手たちは17日に会場となる中国・広東省深圳市へ香港経由で飛び立った。
初めての海外となる選手も多く、高層ビル群に目を丸くするなど初々しい姿も見受けられた。また宿泊先のホテルでは選手・スタッフ一人ひとりに花束が渡されるなど歓迎ムード一色。選手たちは長旅の疲れこそ見えたが、まもなく始まる決戦を前に気持ちを高めた。
開幕戦はフィリピンと!
開幕前日の公式練習は雨のため、体育館での調整となったが、開幕戦となったフィリピン戦から選手たちは持ち味を発揮した。
先発を任された右腕・川島新大(草加市立川柳中)がスリークォーターから独特の球筋でキレの良いストレートなどを制球良く投げ込み、5回を投げて1人の走者も許さず6三振を奪う完璧な投球を見せた。
打線はフィリピンの先発左腕のストライクゾーンを広く使った投球の前に2回まで5三振を喫する苦しい立ち上がりとなったが、3回1死から田栗慶太郎(佐世保市立日野中)のレフト前安打を皮切りにチャンスを作る。すると金子永(立教新座中)がセンターオーバーの二塁打を放ち先制に成功。さらに渡辺優斗(門真ビックドリームス)のショートゴロの間に2点目を追加した。
5回には上加世田のセンターオーバーの二塁打と金子のショート後方にポトリと落ちるタイムリーでダメ押し。この後、雷を伴う大雨が降り続いたため試合は降雨コールドが成立した。
チャイニーズ・タイペイと香港との戦い
オープニングラウンド第2戦となったチャイニーズ・タイペイ戦は今大会山場の1つとなった。昨年のU-15W杯では3位に入るなど躍進目覚しい相手に対しエース格を任された右腕の上加世田の好投が光る。
「ストレートとスプリットが今日は良かったです」と振り返るように、4回を1安打無失点。5回と6回は左腕の坂本海斗(明豊中)が四球でピンチを招きながらも、「真ん中から外に上手く決まりました」と、ともに得意のスライダーで左打者から空振り三振を奪ってピンチを脱した。
打線は、チャイニーズ・タイペイの投手陣から四球や安打で毎回走者を出しながらも左腕・林孟佶の力強いストレートの前にあと一本が出ず。それでも積極的に振っていく姿勢がボディーブローのように効いていた。
5回、この回からマウンドに上がった徐鴻祥から3四球でチャンスを作ると、上加世田が「高めは手を出さないようにしていました」とフルカウントから冷静に四球を選び先制に成功した。
この1点のリードを最後は、松井悠真(菊池市立菊池南中)が打者3人から2三振を奪う完璧な投球で締めた。投手陣の好投はさることながら「体も大きく強打のチームなので緩急を使いました」という渡辺優斗(門真ビックドリームス)の冷静なリードも光り、1安打完封リレーで接戦をモノにした。
オープニングラウンド最終戦となった香港戦では、相手から冷静に四死球を選び、要所でタイムリーを放つなどして得点を重ねた。
また近藤大誠(長岡市立宮内中)、石井羚(伊豆市立修善寺中)、翠田広紀(横浜市立舞岡中)が1人の走者も許さない投球で完全リレーをするなど最後まで高い集中力を発揮した。
スーパーラウンドでの激戦
そして、スーパーラウンド初戦の韓国戦が大一番となった。これに勝てば決勝進出が決まり、来年行われるU-15W杯(硬式球で開催)への出場権も獲得できる。
そんな緊張感の高い試合で全員野球が存分に発揮された。
先発のマウンドに上がった上加世田だが初回にピンチを招く四球で2番打者を出塁させると、続くPARK Juwonに左中間へ長打を打たれる。
先制を許したかに思えたが、中堅手の小林洸貴(習志野市立第一中)と遊撃手の山下恭吾(久留米ベースボールクラブGO AHEAD)の流れるような中継プレーで本塁に送球がされると、難しいショートバウンドを渡辺が上手くさばき間一髪アウト。
連係もさることながら「試合に入る前、平井成二コーチから“グラウンドが日中降った雨の影響で湿っているので、低い体勢でさばくように”と言われていたので、それが上手くできました」と話す渡辺の冷静さも光り、先制を防いだ。
2回にはその渡辺が盗塁を刺し、3回途中からマウンドに上がった坂本は四死球を出すも空振り三振でピンチをしのぎ、4回から6回は川島が、フィリピン戦に続く好投で韓国に得点を許さない。
これに打線が報いたのが6回だ。浅野翔吾(高松市立屋島中)が死球で出塁すると、その後に犠打や内野ゴロの間に三進。そして、相手投手の暴投を見逃さず激走し本塁を陥れ、渾身のガッツポーズを決めた。
最終回はチャイニーズ・タイペイ戦に続き松井が走者を1人も許さずに締めて試合終了。
翌日はスーパーラウンド最終戦の中国戦にも大勝。韓国との激戦を制したチャイニーズ・タイペイとの再戦を決勝戦で行うはずだったが、降り続く雨により中止。
この結果、スーパーラウンドを3勝(オープニングラウンドからの1勝の持ち越し含む)0敗の首位で終えていた侍ジャパンU-15代表が2大会連続3回目の優勝を決めた。
大会連覇…そして次の戦いへ!
日本勢として初となる大会連覇と海外開催での優勝という快挙を、5試合連続無失点という高い投手力と守備力で飾った。
また個人表彰では、最高殊勲選手に渡辺優斗(門真ビックドリームス)、最優秀投手に川島新大(草加市立川柳中)、ベストナインに捕手の渡辺と遊撃手の山下恭吾(久留米ベースボールクラブGO AHEAD)が選出。
8月1日からの一次合宿、8月14日からの直前合宿、それぞれ4日間を無駄にすることなく積み重ねてきたからこその成果や結束を存分に発揮した。
中学校の野球部やクラブチームで軟式野球をしている選手たち約18万名から選ばれた18名、経験豊富なスタッフ陣がその誇りを胸に、異国の地での連戦で目指してきた野球を発揮しきったことは大きな賞賛に値することだろう。
そして選手たちはこの後、高校野球の世界に羽ばたく。この先も続く野球人生において自らの長所を作り、それを最大限に伸ばしていく活躍を彼らの今後に期待したい。
また、今大会出場した選手のうち9名が11月2日から始まる第19回全国中学生都道府県対抗野球大会in伊豆(開会式は11月1日)に出場する。国際大会を経験した選手たちがどんなプレーをするのかも大いに楽しみだ。
スポーツライター 高木遊
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